
第1回
脳ドックで脳動脈瘤が見つかったら?
まず知ってほしい3つのこと
「脳ドックで脳動脈瘤が見つかりました。」
外来で最も多く受ける相談の一つです。
突然そのように言われると、
・いつ破裂するのだろう
・すぐに手術が必要なのだろうか
・普通に生活していて大丈夫なのだろうか
と不安になる方も少なくありません。
しかし、まずお伝えしたいのは、
脳動脈瘤が見つかったからといって、すぐに治療が必要になるわけではない
ということです。
大切なのは慌てることではなく、その動脈瘤がどの程度の危険性を持っているのかを正しく評価することです。
まず知ってほしいこと①
「見つかったこと」は悪いことではありません
脳動脈瘤は、脳の血管の一部が袋状に膨らんだ状態です。
ほとんどの場合、自覚症状はありません。
そのため、多くの方は脳ドックやMRI・MRA検査で偶然発見されます。
確かに、脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こす可能性があります。
しかし、破裂する前に見つかったということは、将来のリスクを評価し、適切な対策を考える機会を得たということでもあります。
私はむしろ、
「見つかって良かったですね」
とお話しすることが少なくありません。
まず知ってほしいこと②
すべての脳動脈瘤が治療の対象になるわけではありません
脳動脈瘤の破裂リスクは一律ではありません。
私たちは診察で、
・動脈瘤の大きさ
・形状
・発生部位
・年齢
・高血圧
・喫煙歴
・家族歴
・経時的な変化
などを総合的に評価しています。
同じ5mmの動脈瘤でも、
「経過観察が適切な場合」と「治療を検討した方が良い場合」
があります。
重要なのは大きさだけではなく、その動脈瘤がどのような特徴を持っているかです。
まず知ってほしいこと③
年齢だけで治療方針は決まりません
外来では、
「もう70歳だから手術は難しいでしょうか」
という質問をよく受けます。
しかし実際には、治療のリスクは年齢だけでは決まりません。
私たちが行った全国20施設による多施設共同研究では、年齢そのものよりも、
フレイル(身体の予備力)
MRIで評価される脳の健康状態
の方が治療後の経過に大きく関係していました。
70代でも非常に元気な方もいれば、60代でも身体の予備力が低下している方もいます。
大切なのは戸籍上の年齢ではなく、その方自身の状態を丁寧に評価することです。
治療が必要になった場合は?
未破裂脳動脈瘤の治療には、
開頭クリッピング術
血管内治療(コイリングやフローダイバーター)
があります。
どちらが優れているという単純な話ではありません。
動脈瘤の場所や形、患者さんの年齢や全身状態、将来の生活まで含めて最適な方法を選択することが重要です。
私自身は、
・後遺症を残さないこと
・長期的な根治性
・身体への負担
この3つのバランスを大切にしながら治療方針を考えています。
おわりに
脳ドックで脳動脈瘤が見つかると、多くの方が不安になります。
しかし、必要以上に恐れる必要はありません。
まずはその動脈瘤の特徴を正しく評価し、自分にとって最も適した選択肢を知ることが大切です。
脳動脈瘤には「すぐ治療した方が良いもの」もあれば、「慎重に経過を見てよいもの」もあります。
一人ひとり状況は異なります。
だからこそ、専門医と十分に相談しながら方針を決めていくことが重要です。
次回予告
第2回
「未破裂脳動脈瘤は本当に治療した方がよいのか?」
治療を勧める場合と、経過観察を選択する場合の考え方について解説します。