未破裂脳動脈瘤は、本当に治療した方がよいのでしょうか?
「治療」と「経過観察」の考え方
第1回では、「脳ドックで脳動脈瘤が見つかっても、すぐに手術が必要とは限らない」ことをお話ししました。
では、実際にはどのような場合に治療を勧めるのでしょうか。
外来でも最も多くいただく質問の一つです。
結論からお伝えすると、
未破裂脳動脈瘤が見つかったからといって、すべての方が治療の対象になるわけではありません。
治療を行うかどうかは、将来の破裂リスクと治療によるメリット・デメリットを慎重に比較しながら、一人ひとりに合わせて判断します。
治療の目的は「今」ではなく「未来」を守ること
未破裂脳動脈瘤は、多くの場合、自覚症状がありません。
つまり、現在困っている症状を治すための治療ではありません。
治療の目的は、
将来起こるかもしれない「くも膜下出血」を予防すること
です。
一方で、どんな治療にも一定のリスクがあります。
そのため、
- 将来破裂する可能性
- 治療による合併症の可能性
この二つを比較し、「治療した方が利益が大きい」と判断される場合に治療を検討します。
私たちは何を見ているのでしょうか?
「5mmだから治療ですか?」
このような質問を受けることがあります。
しかし、実際には大きさだけで判断することはありません。
診察では、
- 動脈瘤の大きさ
- 形状(いびつさや突出の有無)
- 発生した部位
- 年齢
- 高血圧
- 喫煙歴
- ご家族にくも膜下出血の既往があるか
- 経過中に大きくなっていないか
など、多くの要素を総合的に評価しています。
同じ大きさの動脈瘤でも、治療を勧める場合もあれば、経過観察を勧める場合もあります。
「経過観察」も大切な治療方針です
「様子を見ましょう」と言われると、
「何もしなくて大丈夫なのだろうか」
と不安になる方も少なくありません。
しかし、経過観察とは「放置すること」ではありません。
定期的にMRIやMRAなどの画像検査を行い、動脈瘤の大きさや形に変化がないかを確認しながら、安全に経過を見守ることも重要な治療方針の一つです。
変化が認められた場合には、その時点で改めて治療について相談します。
私が大切にしていること
診療では、「手術をすること」そのものを目的にはしていません。
私が大切にしているのは、
患者さんにとって最も良い選択をすることです。
治療による利益が大きいと判断すれば、治療をお勧めします。
一方で、経過観察の方が安全であると判断した場合には、その理由を丁寧に説明し、安心して経過を見ていただけるよう心掛けています。
「手術をする勇気」と同じように、「手術をしない判断」も、専門医として大切な役割だと考えています。
おわりに
未破裂脳動脈瘤には、「治療した方がよいもの」と「慎重に経過を見た方がよいもの」があります。
その判断は、動脈瘤だけでなく、患者さん一人ひとりの年齢や全身状態、生活背景まで含めて総合的に行います。
大切なのは、「見つかったから治療する」「小さいから安心」と単純に考えることではありません。
専門医と十分に相談し、ご自身にとって最も納得できる選択をすることが重要です。
次回予告
第3回
「クリッピング術とカテーテル治療―どちらを選ぶべき?」
未破裂脳動脈瘤の治療には、大きく分けて開頭クリッピング術と血管内治療があります。
それぞれの特徴やメリット・デメリット、どのように治療法を選択しているのかについて、分かりやすく解説します。